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デジタルフィルタの不思議(その4)

FIRフィルタの設計では、IIRと異なりアナログモデルを決定して、その極ゼロを変換するというような方法は用いません。所望の周波数特性と決定し、それに対して直接フィルタ係数を求めていく方法と採ります。このとき、一般的には、真ん中のタップ(各段の掛算をタップと呼び、その係数をタップ係数:Tap coefficientと呼びます)を中心にタップ係数が対称になっており、そのとき位相特性は直線位相となります。直線位相というのは、フィルタによる位相遅延が周波数に比例しているということで、言い換えれば、入力に対して一定の時間遅延(群遅延と呼びます)が与えられるだけで、周波数の違いによる相対的な位相ずれが生じないということです。

位相特性が直線位相に決まっているということは、設計上の基準モデルとしては、振幅特性だけで十分ということです。振幅特性だけ入力すればよいということは、絵に描いた周波数特性を持つフィルタを実現することができるということなのです。しかも、群遅延があるだけなので、位相の乱れもないのです。これを試してみたのは下図です。

黄色が「絵に描いた周波数特性」で、水色がそれを基に設計したFIRフィルタの特性です。ここではFIRフィルタは349タップにしていますが、まだある程度の差があります。もっと段数を増やしていけば、差は減って行きますが、元になっているものが直線をつなぐことで作られているので、正確に再現するのが厳しいのは事実です。

もうひとつ注意していただきたいのは、周波数の高い部分はかなり一致しているのに対して、周波数の低い部分は、あまり一致していません。これは、FIRは周波数の低い部分の処理があまり得意でないということを示しています。また、高域にリップルが見られますが、これは低域特性を向上させるために矩形窓(窓の話しは別に機会にしたと思います)を用いたことによって発生したものです。みなさんも、FIR Design Tool サンプル版ソフトウェアで試してみてください。

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