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デジタル信号と離散信号

現代はデジタルの時代などといわれますが、デジタルとはいったいなんなのでしょうか。デジタルが「指」あるいは「指で数える」という意味が示すとおり、デジタル信号とは数値化された信号です。自然に存在するもの、温度とか速度とか高度とは、一般にアナログ量と呼ばれ、それらは連続量です。数値化しようとすると、どうしても数値化できないところが出てきます。例えば、0.1 の桁までしか表示されない温度計では、18.63℃ とか 24.93℃ という温度は表現できません。これは、要求される精度が 0.1 桁あれば一般用の温度計としては十分で、それ以上の精度は必要とされないからです。

では、いまでは殆どの人が持っていると思われる音楽 CD の場合について考えてみましょう。音楽 CD は 16 ビットで量子化(注1)、すなわち音声の瞬時値を65536 段階の数値で表現しています。この 16 ビットという精度は、音響工学の一分野である人間の耳の研究成果を基にしたものであり、この精度自体が問題になることはありません。

では、何が問題になるのでしょうか。まず、下の図を見てください。

この図は音波(正確には電気信号に変換された音波)が連続であるのに対して、デジタル化した音声信号は、時間方向に対しても不連続であることを現しています。デジタル信号では、時間方向に対しても、ある時刻においてサンプルし、そのサンプル値の集合で信号を表現するしかありません。この信号は瞬時値がデジタルで表現されているか否かと問わず離散信号と呼ばれます。

上図では、Display Samples の右のボタンをクリックするとサンプルした信号が表示され、もう一度クリックするとより密な間隔でサンプルした信号が現れます。ちょっといじってみれば分かると思いますが、数値化する点と点の間に大きなピークがあったとしても、それを捕らえることはできません。数値化する点を密にする、すなわち標本化(注2)周期を小さくするといいということも理解できたと思います。これは理論的にも、標本化周波数の 1/2 を超える周波数成分は離散信号では表現できないというシャノンの定理として証明されています。

しかしながら、シャノンの定理はあくまでも、標本化に関する理論的な証明であり、それだけで、音楽 CD は完璧に音楽を表現できるという訳ではありません。可聴周波数上限は 20KHz とする音響学の定説を問題視する意見もあり、音楽 CD は本当に人間にとって必要十分な音楽情報を伝えられないという意見の人が沢山います。関連する問題点のいくつかをこのコーナーで別の項で説明していきたいと思います。

(注1)量子化とは、アナログ量をデジタル値に変換すること。先の温度計であれば、18.63℃ が 18.6℃ になり、24.93℃ が 24.9℃ にあるということです。

(注2)標本化とは、アナログ量をある時点あるはある地点でデジタル値に変換すること。時間軸に沿って標本化する場合、その周波数は標本化周波数と呼ばれる。サンプリング周波数と呼ばれることも多い。

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